ねこのまま

あの子は猫のよう。
お店には鍵がかかっているから、外には出られないけど、
いつのまにかどこかにふらりと行ってしまうし、
一人のほうが好きなのかと思ったら、私に抱きついて甘えてくるの。
かわいいわ。

私も猫のよう。
好きなことしかしたくないし、いたずらも大好き。
お昼は暇さえあればずっと寝ているし、
ぼーっとしているとつい、ふああ。ってあくびがでちゃう。
こういうの、猫っぽくない?

そんな猫な私たちは、秘密があるの。
月が出てる夜だけ、私たちは屋根裏部屋にのぼるの。
部屋は天井が窓になっていて、月の光がそそぎ込むからとても綺麗。
私もあの子もお気に入りのこの部屋で、
静かに静かにお楽しみの準備。

私がそっと蛍袋のランプに火をつけて、
宝石箱のようなオルゴールのねじをあの子が回す。
ぼんやりと部屋が明るくなって、きゃらきゃらと音が鳴りはじめたら、
月夜の晩だけのダンス会。

それがはじまるのを見届けると、おじいさんは下の部屋に行って眠ってしまうの。
だから私たちだけのダンス。
いつも音楽は一緒なのに、踊る内容はめちゃくちゃ。
好き勝手に踊って、歌って、笑いあう。
いつのまにか、外の窓には猫がいっぱい集まってて、私たちと踊ったり歌ったりしてくれる。
きっと私たちが猫みたいだから、仲間だと思ってくれるのね。
だから私たちと一緒にダンス会。
そんなことを夜通しずっとするの。

気付くと、天井の窓にはもう月がなくなっていて、まぶしい朝日が射し込んでいる。
いつのまにか猫たちはどこかへいってしまっているし、
ランプの油は切れて、音楽も止まってる。
もうおしまいなのね。つまらないわ。
そんな風に思っている頃に、おじいさんは私たちのところへやってくる。

――さあ、もう朝だ。ショウケエスにおかえり。

私たちはいい子だから、おじいさんの言うことをちゃあんと聞くの。
一階へ降りて、出窓の空いてるスペースに、
二人で並んで、ちょこん。とおすまし。
これが私たちの一日の終わりで、お店の始まり。

ねぇ。
このまま私たちはずっと一緒よね?
このアンティークショップでご主人様を待つのよね?
そんな人、こないけど。
だからいつまでも、永遠に、一緒。

ね、このまま。


 

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